オンコロジー治療 免疫チェックポイント阻害薬について

免疫チェックポイント阻害薬の現状と今後について

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本日は、
免疫チェックポイント阻害薬の現状と今後の将来性について、
ご紹介させて頂きます。

 

免疫チェックポイント阻害薬に関しては、
以前、このブログ記事で取り上げていますので、
もしよろしければ、そちらもご覧ください。

 

・「免疫チェックポイント阻害薬のメリット、デメリットについて」

 

 

さて、
昨今、免疫チェックポイント阻害薬が各社から発売し、
現在、6種類の免疫チェックポイント阻害薬が使用できる状況ですが、
現状として、どの薬剤が最も多く使用されているのでしょうか。

 

 

また、各免疫チェックポイント阻害薬の違いは、何かあるのでしょうか。

どのような使い分けがされているのでしょうか。

どの薬剤が有利な状況なのでしょうか。

今後、免疫チェックポイント阻害薬市場はどうなるのでしょうか。

 

 

今回、このブログ記事で取り上げていきます。

 

 

最近、よく言われていることとして、
オンコロジー領域の製品は、いまや競争が激化し、
免疫チェックポイント阻害薬市場も、
プライマリー化しつつあり、大差のないオンコロジー製品も多い、
と言われていたりします。

 

それゆえに、
がん(オンコロジー)領域の医薬品も、
今では生活習慣病治療薬の製品のように、溢れかえっている、
と言われていたりします。

 

すなわち、
オンコロジー製品が大差のない製品が多いということは、
オンコロジーMRもプライマリーMR化しており、
オンコロジーMRの価値も下がっており、
オンコロジーMR不要論もある現状です。

実際、そうなのでしょうか。

 

 

結論から申しますと、
現時点では、がん(オンコロジー)製品は、
原則、国内(もしくは海外の)ガイドラインに添って、
明確な使い分けがされており、
また適応も異なる製品も多いため、プライマリー化というほど、
オンコロジー領域は、プライマリー化していません。

 

すなわち、「がん」といったオンコロジー領域は、
年々、新たな新薬が発売し、製品群の競争は激しくなっていますが、
それでも、現時点では、国内外のガイドラインに沿って、
ある程度、明確な薬剤の使い分けがされており、
また、適用や用法・用法、副作用が異なる薬剤も多いため、
競争は激化しつつも、生活習慣病領域の薬剤ほどは、
競争は激しくなく、差別化することもでき、各薬剤の価値は、
ある一定は存在している状況です。

 

ただし、オンコロジー領域の製品であっても、
有効性や副作用、薬価等、大差のない製品群も存在します。

 

また、免疫チェックポイント阻害薬市場も、
適応が異なる薬剤が多く、さらに、使用ラインが異なるため、
現時点では、明確な使い分けがされています。

 

そもそも、プライマリー化って何?
といったところですが、仮にここでは、
プライマリー製品にあるような、差別化しづらく、
ほとんど有効性や副作用、薬価が変わらない薬剤が
多く存在する領域の製品を扱うことが、
仮にここでは、プライマリー化としましょう。

 

現時点では、免疫チェックポイント阻害薬の中で、
ある程度使い分けされており、
有利な薬剤とエビデンス的に、使用が滞る可能性がある不利な薬剤が
存在します。

 

そんな免疫チェックポイント阻害薬の現状と今後について、
ご紹介させて頂きます。

 

まず、免疫チェックポイント阻害薬のプライマリー化していると
いわれている昨今ですが、そのほうな方がに言いたいのは、
本当に免疫チェックポイント阻害薬のこと
理解されてますか?と問いたいです。

 

 

現在発売されている免疫チェックポイント阻害薬の一覧を
下記に記載します。

 

【抗PD-1、PD-L1抗体】
①オプジーボ   (ニボルマブ)   :小野薬品社/ブリストル社      2014年9月発売
②キイトルーダ(ペムブロリズマブ):MSD社/大鵬薬品社        2017年2月発売
③バベンチオ   (アベルマブ)   :ファイザー社/メルクセローノ社   2017年11月発売
④テセントリク(アテゾリズマブ) :中外製薬社                          2018年4月発売
⑤イミフィンジ(デュルバルマブ) :アストラゼネカ社        2018年8月発売

 

【抗CTLA-4抗体】
①ヤーボイ    (イピリムマブ)   :ブリストル社/小野薬品社       2015年8月発売

 

下記に、現時点での、
免疫チェックポイント阻害薬の適応の一覧を
記載します。

 

※太黒字箇所は唯一の適応症(免疫チェックポイント阻害薬の中で)

 

【オプジーボ】
①悪性黒色腫
②切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
③根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
④再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
⑤再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌
⑥がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌
⑦がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫

【キイトルーダ】
①根治切除不能な悪性黒色腫
PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
③再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌

【バベンチオ】
①根治切除不能なメルケル細胞癌

【テセントリク】
①切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

【イミフィンジ」
①切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法

【ヤーボイ】
根治切除不能な悪性黒色腫
②根治切除不能又は転移性の腎細胞癌

 

 


免疫チェックポイント阻害薬は、
現時点で、6種類の薬剤が発売されていますが、
それぞれ適応が異なり、もちろん同じ適応を取得している薬剤もありますが、
当然のことですが、使用に関しては、まず適応症ごとに使い分けがされています。

また、がん(オンコロジー)の治療に関しては、
原則、国内(もしくは海外)のガイドラインに沿って、治療されることがほとんどであり、
一番最初の使用できる薬剤、二番目に使用できる薬剤、三番目・・・、
というように、使用ライン(使用の順番)がほぼ決まっています。

1st(薬剤A)→2nd(薬剤B) →3rd(薬剤C) →4th(薬剤D)以降・・・というように、
例えば、原則2nd line以降でしか使用できない薬剤を1st lineで使用する、
ということは、ほとんどありません。

そのため、診療ガイドラインに沿って、
治療に使用できる薬剤の順番が決まっています。

 

ということで、
現時点での、がん(オンコロジー)治療に使用される、
免疫チェックポイント阻害薬の使い分けとして、
まず、当然のことながら、適応症ごとの違い、が挙げられます。

次に、使用される順(使用line)ごとに、
使用できる免疫チェックポイント阻害薬の使い分けがされています。

 

【免疫チェックポイント阻害薬の使い分け】
①まず、適応症ごと。
②次に、使用ラインごと。

 

さて、では免疫チェックポイント阻害薬を順に見ていきます。

 

まず初めに、「オプジーボ」の現状について、
ご紹介します。

 

一番適応が多い薬剤は、
一番初めに発売された「オプジーボ」であり、
現時点では、7つの適応を取得しています。

 

肺がん、胃がん、腎がん、頭頚部がん、悪性リンパ腫(古典的ホジキンリンパ腫)、悪性中皮腫、
の7つ、です。

 

国内での患者数(罹患)が多い順に並べます。

胃がん(約13.2万人>肺がん(約12.8万人)>腎がん(約2万人)>
頭頚部がん(約5,000人)>悪性黒色腫(メラノーマ)約4,000人>
古典的ホジキンリンパ腫(約2,000人)>悪性中皮腫(1,000~1,500人)

※国立がん研究センター 2017年がん統計予測より(2017.9.20)

というように、
胃がんが最も患者数が多く、続いて肺がん、腎がん・・・となっています。

患者数ごとに見ますと、
胃がん(約13万人)と肺がん(約13万人)の患者数が圧倒的に多く、
その他のがんは、患者数が数千~数万人です。

 

したがって、
患者数の多い疾患の「がん」(胃がん 肺がん)において、
適応があり、早い使用ラインにて、使用できる免疫チェックポイント阻害薬が
大きくシェアを獲得でき、売上を上げることができる薬剤です。

 

では、オプジーボはどうなのか、といいますと、
胃がんと肺がんで適応を取得しており、
胃がんでは、3rd line以降に使用でき、
肺がん(非小細胞肺癌)では、2nd line以降に使用できます。

 

がんの薬物治療の基本として、
早いライン(使用line)で使用した方(1st lineや2nd line)が、
患者さんの状態(全身状態)が良いことが多いため、薬剤の効果が得られやすいことが
わかっています。

遅いライン(3rdや4th以降)で薬剤を使用した場合、
すでにがん患者さんの病態が進行している場合や
原発巣の「がん」が他臓器に転移して全身状態が不良になっていることがあり、
薬剤の効果が得られにくい場合があります。

 

したがって、1st lineに使用できる薬剤が一番効果を得られやすい可能性が高く、
その結果、できるだけ長く薬剤を使用することが可能な場合が多いです。

薬剤を長く使用できるということは、
売上にも貢献しやすいということです。

そのため、診療ガイドラインに1st lineとして記載された薬剤は
かなり有利な薬剤となり、必然的に使用されることが多くなります。

もちろん、前提として、
ガイドラインにその薬剤が記載されるということは、
医学的根拠に基づいた確かなエビデンスがなければ、記載されることは原則ありません。

1st lineに記載されるということは、
ほとんどの場合、1st lineの臨床試験等のエビデンスが評価されて、
1stで使用できる薬剤になった、ということです。

 

では、「オプジーボ」はどうかといいますと、
肺がん(非小細胞肺がん)では、2ndライン以降に使用でき、
胃がんでは、3rdライン以降に使用できます。

胃がんで適応を取得している免疫チェックポイント阻害薬は、
現時点では、「オプジーボ」だけであり、
有利な状況ですが、3rd line以降にのみ使用できますので、
それなりに、使用できる期間や有効性が限られます。

ただし、免疫チェックポイント阻害薬の中では、
唯一無二の薬剤ですので、その点は現時点では有利です。

しかし、今後、他の免疫チェックポイント阻害薬も
胃がんの適応の臨床試験を実施中ですので、
他の免疫チェックポイント阻害薬が胃がんの適応を取得するまで、
シェアを伸ばす必要があります。

 

肺がん(非小細胞肺がん)に関しては、
2nd line以降に使用できます。

実は、「オプジーボ」は、
非小細胞肺がんにて、1st lineを取得するための臨床試験(ニボルマブ Vs ドセタキセル)をかつて実施しましたが、
主要評価項目である、PFS(無増悪生存期間)で化学療法の「ドセタキセル」と比べて
有意差がつかず、1st lineの適応取得に
失敗した経緯があります。(オプジーボ:CheckMate 026 試験より)

ただし、この試験の失敗の原因は、
「そもそも、オプジーボが1st lineを取得できるような有効性のある薬剤ではなかった。」、
ということではなく、臨床試験の組み方に問題があった、と言われています。

この臨床試験の対象患者さんは、
「PD-L1陽性の発現率が5%以上」の患者さんを
対象としています。

この「PD-L1陽性」というのは、
がん患者さんに免疫チェックポイント阻害薬が有効かどうかの
1つの指標ともなっており、
PD-L1が発現している(陽性の)方が、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい、
ということがわかっています。

では、
PD-L1とは何かということですが、
PD-L1は、Programmed death-ligand1のことです。

また、
PD-1とは、
Programmed death-1のことであり、
細胞傷害性「T細胞」の表面にある免疫チェックポイント「受容体」の一種です。

すなわち、PD-L1は、
「プログラム細胞死リガンド1」を意味していますが、
リガンドの1種であり、リガンドとは、受容体に結合する(神経伝達)物質のことです。

PD-L1は、PD-1受容体に結合する、
物質のことなのです。

では、PD-L1がT細胞に存在するPD-1に結合すると、
どうなるのか、ということですが、
PD-L1というリガンドが、T細胞に存在するPD-1受容体に結合することで、
T細胞の働きを抑制します。

T細胞とは、「がん」などの異物をやっつける機能がある、
通常、良い細胞です。

それが、PD-L1が結合することで、
その免疫機能が抑制されることにより、
がんなどの異物をやっつける機能が抑制され、
がん細胞が増殖します。

そこで、その結合(PD-1とPD-L1の結合)を抑制する薬剤が、
免疫チェックポイント阻害薬です。

免疫チェックポイント阻害薬は、
抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の2種類ありますが、違いは、
T細胞に存在するPD-1受容体に結合し、PD-L1との結合を阻害するのが、
「オプジーボ」や「キイトルーダ」といった抗PD-1抗体であり、
がん細胞側に存在するPD-L1に結合し、PD-1との結合を阻害するのが、
「テセントリク」や「バベンチオ」といった、抗PD-L1抗体です。

抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体に効果の差はあるのか、
ということですが、以前は、がん細胞側を阻害する抗PD-L1抗体の方が
効果が高いのではないか、と言われていた時期もありましたが、
現在では、効果に差はほとんどないのでは、という結論になっています。

だだし、今後の研究や臨床試験次第で、
どちらかが効果良い、というエビデンスも出る可能性はあります。

 

ということで、
話を戻しますと、
「PD-L1陽性、5%以上」の解説ですが、
PD-L1というリガンドの発現率は、検査である程度、
測定することができます。

PD-L1とは、リガンド(伝達物質)のことですが、
PD-L1とは、元をたどれば、タンパク質のことですので、
IHC検査で、体内から取り出した、がん細胞から、
PD-L1の発現率を測定することが可能性です。

ちなみに、IHCとは、「免疫組織化学染色法」の略であり、
現在では、かなり頻繁にIHC検査が実施されており、
簡単にPD-L1の発現率を測定することが可能です。

ということで、
免疫チェックポイント阻害薬は、
PD-L1が陽性で、多く発現しているほど、
効きやすい可能性が高いと、言われているため、
免疫チェックポイント阻害薬を使用する前は、
PD-L1の発現の有無を確認してから、
免疫チェックポイント阻害薬を使用することが多いです。

 

「オプジーボ」の肺がん(非小細胞肺がん 1st line)の臨床試験では、
患者条件として、「PD-L1陽性 5%以上」と設定していました。

5%以上ですので、
患者条件として、PD-L1の発現率は決して厳格ではなく、
幅広い多くの患者さんが対象となりました。

すなわち、
ほんの少しPD-L1陽性の患者さんもこの臨床試験に多く含まれていた、
ということです。

免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい患者さんの要件の1として、
PD-L1が陽性で発現率が高い患者さんが効きやすいのですが、
少ししか、発現していない患者さんでは効果が期待できないことも多いのです。

その結果、
この「CheckMate 026 試験」(非小細胞肺がん 1st line オプジーボ vs ドセタキセル)では、
主要評価項目であるPFS(無増悪生存期間)では、有意差がつかなかったのではないか、
と言われています。

それゆえに、
「オプジーボ」は、肺がん(非小細胞肺がん)での
1st line取得をすることが出来ず、2nd line以降に使用できる
薬剤となったのです。

 

一方、
MSD社の免疫チェックポイント阻害薬である「キイトルーダ」は、
肺がん(非小細胞肺がん)における、1st line取得に成功しており、
実際、ガイドライン上での1st lineに記載されている薬剤です。

 

ただし、「キイトルーダ」使用には、縛りがあり、
「PD-L1陽性 50%以上」の患者さんのみ、キイトルーダが1st lineにて
使用できます。

このは、「キイトルーダ」のフェーズⅢの臨床試験である、
「KEYNOTE-024」において、
患者要件として、「PD-L1 陽性 50%以上」の患者さんを対象に
臨床試験を実施し、主要評価項目であるPFS(無増悪生存期間)において、
化学療法と比べ、有意にPFSを延長することができたため、
非小細胞肺がんの「1st line」(PD-L1 50%以上)にて使用できる薬剤となりました。

 

臨床試験の組み方(患者要件の設定)次第で、
治療ラインが変わってくるわけですから、
薬剤成長のドライバー要因として、
最初の臨床試験での設定項目や結果はとても重要なファクターとなっています。

 

さて、
話を「オプジーボ」に戻します。

オプジーボの現在の適応は7つありますが、
肺がん、胃がん以外の適応も見てみます。

 

腎臓がんでは、
今まで2nd line以降での適応を取得していましたが、
今回、1st lineの適応を今年8月に取得し(ただし、ヤーボイ併用でintermediate&poorリスクの患者さんのみ)、
腎がんの1st lineでも使用可能な薬剤となりました。

この腎がんにて、1st lineを取得した臨床試験とは、
「CheckMate 214」試験であり、
既存の腎がんの1st lineで標準治療として、頻繁に使用されていた分子標的薬「スーテント」(ファイザー社)に
主要評価項目であるOS(全生存率)に有意差をつけた臨床試験は世界中で注目され、
「オプジーボ」はインパクトのある結果を残しました。

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ただし、腎がんにおける、「intermediate&poorリスク」といった、
患者さん限定ですが、腎がんでは、この「intermediate&poorリスク」の患者さんが約8割りほどを
占めているため、今後、オブジーボ&ヤーボイ併用で、1st lineとして
腎がんでの使用が普及する可能性が高いです。

また、頭頚部がんでは、2nd以降に使用でき、免疫チェックポイント阻害薬の中で唯一、
頭頚部がんに適応を取得している薬剤が「オプジーボ」です。

さらに、悪性中皮腫でも、唯一適応を取得している免疫チェックポイント阻害薬です。

古典的ホジキンリンパ腫では、再発・難治性の古典的ホジキンリンパ腫、単独に限り、使用できます。

そして、
一番初めに適応を取得した悪性黒色腫(メラノーマ)ですが、
メラノーマでは、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいことがわかっています。

その理由として、免疫チェックポイント阻害薬は
DNAの遺伝子変異が多い(異物と見なされやすく、免疫機能が働きやすい)「がん」に効きやすいことが分かっており、
メラノーマは、遺伝子変異が多い「がん」であることがわかっています。

そのため、
「オプジーボ」や「キイトルーダ」といった免疫チェックポイント阻害薬は、
早い段階で、メラノーマでの臨床試験を実施しており、
ある一定の有効性がメラノーマにおいて、認められているのです。

ただし、
国内にメラノーマの患者数は、約4,000人と
かなり少なく、メラノーマは皮膚がんの一種ですので、
海外で患者数が多いことがわかっており、
国内でのメラノーマにおける免疫チェックポイント阻害薬使用は決して多くはない状況です。

 

以上、「オプジーボ」の現状について、
記載してみました。

まとめます。

 

「オプジーボの現状」
①一番初めに発売された免疫チェックポイント阻害薬であり、
現時点(2018.9.12)では、適応は「7つ」と免疫チェックポイント阻害薬の中で最も適応が多いため、
使用されるケースは他のICIと比べ多く、汎用性のある薬剤であり、現時点では、価値を見出しやすい。

②免疫チェックポイント阻害薬の中で、オプジーボのみ適応取得しているのが、
現時点で、「胃がん」、「頭頚部がん」、「腎がん」、「悪性中皮腫」であり、この4つの適応で差別化しやすい。
特に、「腎がん」では1st lineから使用でき、他剤と差別化が期待でき、シェア獲得に大きく貢献できる。

③患者数の多い「肺がん」での1st line取得の臨床試験失敗は痛手であった。
一方、「キイトルーダ」はPD-L1陽性50%以上という、縛りはあるが、1st line取得に成功している。

 

 

続いて、
MSD社の「キイトルーダ」の現状について
ご紹介します。

「キイトルーダ」は、
現時点では、4つの適応を取得しています。

「肺がん」、「尿路上皮がん」、「悪性黒色腫(メラノーマ)」、「古典的ホジキンリンパ腫」、
の4つです。

「メラノーマ」と
血液がん(悪性リンパ腫)の一種である、「古典的ホジキンリンパ腫」に
適応を取得しているのは、
「オプジーボ」と同じですね。

「メラノーマ」と「古典的ホジキンリンパ腫」は
国内での患者数が数千人であり、
使う患者さんがかなり限定されているため、
この2つの適応では、売上やシェア向上は期待しくにいという
現状があります。

しかし、
「尿路上皮がん」と「肺がん」は
それぞれ患者数が、約6万人と約13万人であり、
売上やシェア拡大に大きく繋がる可能性がある適応なのです。

尿路上皮がんに関しては、
最近、といっても半年ほど前ですが、
2017年12月に、免疫チェックポイント阻害薬の中で
初となる「尿路上皮がん」の適応を「キイトルーダ」は取得しました。

これは、なかなかインパクトがあり、
今まで尿路上皮がんの薬物治療は、限られた化学療法しか
ほとんど治療薬がありませんでした。

尿路上皮がんには、化学療法しかほとんど効果がなく、
分子標的薬さえも、尿路上皮がんに適応をもっている薬剤はないのです。

そこで、免疫チェックポイント阻害薬である「キイトルーダ」が
尿路上皮がんの適応を取得し、
尿路上皮がんにおける、治療選択肢の幅が広がりました。

ただし、使用ラインに関しては、2nd line以降の使用のみに限られており、
1st lineで使用することはできません。

尿路上皮がんの適応を取得するために臨床試験を行った
「KEYNOTE-045」では、既治療(2nd line以降)の患者さんが対象の試験ですが、
主要評価項目であるOS「全生存率」にて、
化学療法と比べ、有意差がありました。

尿路上皮がんの国内の患者数は、
6万人ほどおり、現時点では、尿路上皮がんに適応を取得している
免疫チェックポイント阻害薬は「キイトルーダ」だけですから、
ますます使用が拡大する予定であり、尿路上皮がん治療でも「キイトルーダ」は
期待されている薬剤です。

 

続いて、肺がんの適応に関してですが、
「キイトルーダ」は、非小細胞肺がんでは、
上記にも記載させて頂いた通り、
PD-L1陽性 50%以上の患者さんのみ、1st lineで使用できるのです。

「オプジーボ」は、
1st lineでは使用できず、2nd以降にのみ使用でき、
「キイトルーダ」は、
1st lineで使用できる(PD-L1検査の縛りあり)、
この使用ラインでの違いは、
オプジーボとキイトルーダの1つの使い分けの基準となっています。

 

また、「オプジーボ」は必ずしも
PD-L1検査が必須ではなく、
「キイトルーダ」はPD-L1陽性 50%以上が適応のため、
「キイトルーダ」はPD-L1検査が必須です。

その点も異なります。

ただし、「オプジーボ」がPD-L1検査の縛りがないといっても、
全く検査してくても良いかといわれれば、そんなことはなく、
PD-L1検査をした方が、より有効だと考えられる患者さんをある程度選定でき、
効果がありそうな患者さんを優先的にオプジーボを使うことが
できるため、実際、検査をすることが多いです。

 

では、今後も
PD-L1陽性 50%以上発現の患者さんのみ、
「キイトルーダ」は1st lineで使用できるのか、ということですが、
現在、PD-L1縛りのない臨床試験を「キイトルーダ」は実施中(KEYNOTE-021)であり、
今後、PD-L1縛りのない1st lineでも使用できるようになる可能性が高いそうです。

というのも、
この「KEYNOTE-021」試験という「キイトルーダ」の臨床試験(フェーズⅡ)では、
PD-L1発現の有無別に、臨床試験を行っており、
PD-L1発現に関わらず、奏効率やPFS(無増悪生存期間)が有意に「キイトルーダ」群の方が良かった
といった結果が報告されています。

対象群は、
「キイトルーダ」+「カルボプラチン」+「ペメトレキセド」といった、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法と、
「カルボプラチン」+「ペメトレキセド」といった、化学療法群の
2つを比べています。

「カルボプラチン」+「ペメトレキセド」という2つの化学療法の併用は、
肺がん(非小細胞肺がん)の薬物治療において、ガイドラインでも1st lineに位置づけされており、
また国内の実臨床だけでなく、海外でも標準治療の1st lineとして位置づけされている治療です。

したがって、
そのグローバルスタンダードな化学療法の標準治療レジメンに
「キイトルーダ」を追加することで、PFSや奏効率がより良い結果が出ることがわかれば、
今後、非小細胞肺がんの1st lineも大きくかわるかもしれません。(といっても、+キイトルーダですが)

今後、
市場の大きい肺がん市場で、今後も1st lineに「キイトルーダ」が位置づけされるのなら、
ますます「キイトルーダ」は欠かせなくなる薬剤になり得るかもしれません。

「キイトルーダ」はしばらく安泰そうですね・・・。

 

さて、
「オプジーボ」と「キイトルーダ」の現状(や今後)について
ご紹介しましたが、残りの3つの免疫チェックポイント阻害薬である、
「バベンチオ」(ファイザー社/メルクセローノ社)、「テセントリク」(中外製薬社)、「イミフィンジ」(AZ社)について
見ていきましょう。

 

「バベンチオ」(ファイザー社/メルクセローノ社)ですが、
現時点では、1つの適応しか取得していません。

皮膚がんの一種である「メルケル細胞癌」です。

「メルケル細胞癌」の国内患者数は100人にも満たないと言われている
非常に希少ながんです。そのため、「バベンチオ」は現在ほとんど処方されていません・・・。

他の適応での臨床試験もいくつか実施中ですが、
現時点では、有意差がついた良い結果が出ておらず、
苦戦中です。

おそらく免疫チェックポイント阻害薬の中で、
一番苦戦している薬剤が「バベンチオ」です。

何といっても、他適応での臨床試験がなかなかうまくいっておらず、
この薬剤の優位性は、未だ他の薬剤が適応を取得していない、
「メルケル細胞癌」に適応を取得していることだけです。

ただし、良い臨床試験の結果が出れば、
また薬剤の評価も大きく変わる可能性があるため、
「バベンチオ」は今後の臨床試験に期待です。

 

続いて、
中外製薬社の「テセントリク」ですが、
これは現時点では、適応は1つのみであり、
肺がん(非小細胞肺がん 2nd line以降)にのみ、
適応を取得しています。

肺がんの2nd line以降に使用できる薬剤は、
「テセントリク」以外にも、「オプジーボ」があり、
「テセントリク」と「オプジーボ」の使いわけに関しては、
現時点では、明確な使い分けはない状況です。

となると、どちらを使ってもよいことになり、
後から発売した「テセントリク」がかなり不利な状況であり、
実際、現在、「テセントリク」が発売して5か月ほど経ちますが、
あまり使用されていない状況です。

もちろん実臨床で「テセントリク」の使用が増えるにつれ、
「テセントリク」の他剤にはないメリット等が新たにわかり、
差別化しやすくなったり、使用促進に繋がる情報が出てくる可能性もありますが、
現時点では、そのような「テセントリク」有利な確かな情報はほぼなく、
苦戦しているが現状です・・・。

また、現時点では2nd line以降のみしか使用できないため、
「非小細胞肺がん」での「1st line」の臨床試験もいくつか実施中です。

その中で、
「IMpower150」試験という非小細胞肺がんの
1st lineの試験があり、この試験も「キイトルーダ」の「KEYNOTE-021」試験と同じように、
化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用にて、1st lineの臨床試験を実施中です。

なぜ、化学療法と併用するのか、ということに関してですが、
これは、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用した方が、
より高い効果が期待できる可能性が高いからです。

化学療法の抗がん剤は、殺細胞性抗がん剤とも呼ばれ、
体内の細胞を破壊するため、副作用も強くでる傾向があるのですが、
この時、DNAも損傷し、遺伝子変異がより起こりやすくなるため、
免疫チェックポイント阻害薬と併用するとより効果的なのではないか、
とも言われています。免疫チェックポイント阻害薬は上記にも記載した通り、
遺伝子変異のある「がん」に効きやすいのです。その理由は、
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫機能を高め、がんをやっつけるため、
がんを異物と見なすには、より遺伝子変異があった方が、異物と見なされやすく、
免疫チェックポイント阻害薬の効果が出やすいことが分かっています。

この上記の内容を、「免疫チェックポイント阻害のメリット・デメリット」というブログ記事でも
この内容に触れていますので、よろしければそのちらの記事もご参照ください。

 

ということで、
話を「テセントリク」の非小細胞肺がんにおける1st lineの
臨床試験に戻します。

「テセントリク」は、
「IMpower150」試験という、1st line(肺がん)を実施中です。

対象群は、
「テセントリク」+「カルボプラチン」+「パクリタキセル」+「アバスチン」、
といった化学療法+免疫チェックポイント阻害薬+血管新生阻害薬「アバスチン」と
「カルボプラチン」+「パクリタキセル」、といった化学療法を比べています。

「キイトルーダ」の臨床試験は
「パクリタキセル」ではなく、この部分が、
「ペメトレキセド」でした。

ガイドラインでは、
+「ペメトレキセド」でも
+「パクリタキセル」でも、
どちらの記載もあり、どちらを1st lineで使用しても良いのです。

しかし、
実臨床では、「ペメトレキセド」の方が「パクリタキセル」よりも
使いやすいことから(有効性はほとんど同じです)、
圧倒的に+「ペメトレキセド」が使用されています。

 

「キイトルーダ」は実臨床で多く使用されている「ペメトレキセド」を組み込み、
「テセントリク」は、昔から使用されてはいますが、今では決して使用が多くはない
「パクリタキセル」を組み込んでいます。

臨床試験の結果次第ではありますが、
この時点(臨床試験の薬剤設定)の段階では、圧倒的によく使用されている「ペメトレキセド」を
組み込んだ「キイトルーダ」が「テセントリク」よりも有利です。

私はもやはこの段階で、
すでに「テセントリク」が後れを取っていると
考えています。

「テセントリク」大丈夫でしょうか・・・。

もちろん臨床試験の結果次第で大きく、
薬剤選択が大きく変わる可能性があるため、
今後の臨床試験次第ではありますが・・・。

 

 

最後に、
アストラゼネカ社の免疫チェックポイント阻害薬「イミフィンジ」
についてご紹介します。

現在「イミフィンジ」の適応は1つのみで、
「切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法」(肺がん ステージⅢ)のみ
適応を取得しています。

適応は1つのみですが、
この適応は衝撃的なとても話題となった適応です。

「根治的化学療法後の」というのは、
肺がんのステージでいうステージⅢ期であり、
がんは一般的に進行度や転移によって、
ステージⅠ~ステージⅣの大きくわけて4つに分けられています。

ステージⅣになるにつれ、病勢や転移が進行しており、
生存率が低くなります。

「イミフィンジ」はそのステージⅢに適応を取得した唯一の
免疫チェックポイント阻害薬です。

「PACIFIC」試験という「イミフィンジ」のフェーズⅢ試験では、
プラセボと比べ、なんとPFS(無増悪生存期間)を11カ月ほど有意に延長しています。

この結果から、肺がんのステージⅢに適応を取得しました。

肺がんのステージⅢの国内での患者数(肺がん患者数の1/3ほど)は、
ざっと4万人ほどであり、「イミフィンジ」は発売されたばかりですので、
今後、使用価値や売上は急速に高まると予想されます。

 

 

ということで、
長くなりましたが、
免疫チェックポイント阻害剤、5剤について、
現状と簡単な今後の数年間の将来性について
記載して見ました。

 

結論から言いますと、
現時点で、最も有利な免疫チェックポイント阻害薬は、
MSD社の「キイトルーダ」とアストラゼネカ社の「イミフィンジ」です。

次に、小野薬品社/BMS社の「オプジーボ」、

そして、中外製薬社の「テセントリク」、

最後に、ファイザー社/メルクセローノ社の「バベンチオ」という順です。

 

 

【免疫チェックポイント阻害薬 有利順】

「キイトルーダ」≒「イミフィンジ」 > 「オプジーボ」 >「テセントリク」 >「バベンチオ」

※左がより有利、右が不利、です。

 

理由を簡単にまとめますと、

・「キイトルーダ」は、今後数年間、市場の大きい「肺がん」での1st line(併用でも)治療薬であり続ける可能性が高い。
・「イミフィンジ」は、現時点で、すでに、肺がんのステージⅢといった希少価値の高く市場のあるポジションでの適応を
取得しており、他薬剤と比べ、差別化がとてもしやすい。
・「オプジーボ」は、(肺がんでは2ndだが)一番適応が多く、エビデンスも豊富であり、
次々と適応拡大中のため今後も期待が持てる。
・「テセントリク」は、現段階では、苦戦中。差別化ができていない。今後の臨床試験や適応次第。
・「バベンチオ」は、「メルケル細胞癌」での適応は注目されたが、それ以外の適応が未だない。臨床試験も失敗の連続。

といったところです。

 

最後に、
免疫チェックポイント阻害薬の現状と今後数年間の将来性について
まとめます。

 

【免疫チェックポイント阻害薬の現状】
①キイトルーダ(唯一肺癌の1st lineを取得した薬剤。PD-L1陽性の縛りはあるものの、インパクトは絶大で売上上昇中。)
②イミフィンジ(肺癌のステージⅢでの適応取得は衝撃的。現時点では、唯一無二の薬剤。発売してすぐだが、価値激高中。)
③オプジーボ(国内外での初の抗PD-1抗体。適応やエビデンスが豊富。肺癌領域はエビデンス的に不利だが、他は試験次第。)
④テセントリク(厳しい状況。臨床試験や最初の適応、失敗してないか・・・。唯一無二性を見出せなければ、価値低下。)
⑤バベンチオ(メルケル細胞癌での取得は注目されたが、それ以外の適応で失敗続き。現状ほとんど処方されていない・・・)
⑥ヤーボイ(作用機序は注目されるも、メラノーマでは思ったほどの効果が期待できず、かなり伸び悩んだ。腎がんに期待。)

 

【免疫チェックポイント阻害薬の今後】
①キイトルーダ(市場大の肺癌での1stを取得、今後、化学療法との併用でも取得予定。良い結果が出る見込みあり。)
②イミフィンジ(肺癌のステージⅢでの適応取得から次に繋げれるか。進行中の臨床試験の成績は、なかなか良い傾向。)
③オプジーボ(次々と新しい適応に向けて、臨床試験が進行中。小細胞肺がんでもよい成績が出ており、今後の適応に期待。)
④テセントリク(数年はおそらく厳しいかも・・・。臨床試験の組み方、失敗していないか?なぜパクリタキセルを使う?)
⑤バベンチオ(メルケル細胞癌以外での適応取得ができるか、それ次第。今のところ失敗続きだが、今後はどうなる?)
⑥ヤーボイ(単独使用では、正直効果はあまり期待できない。オプジーボとの併用で価値を見出せるか。)

 

 

以上、
免疫チェックポイント阻害薬の現状と今後、数年間の将来性について、
記載してみました。

 

ご参考までに。

 

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