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本日は、
ファイザー社の将来性について、
私の独断と偏見にて、ご紹介させて頂きます。
まず、ファイザー社と言えば、
製薬会社の中で、何度も、世界NO.1の売上を誇ってきた、
最大手で最大規模の外資系製薬会社ですね。
また、合併を繰り返して、
急成長してきた企業でもあり、もちろん、もともとの母体の企業も
多くの売上を誇る大企業でしたが、有望な開発パイプラインを企業ごと買収することでも、
有名な企業です。
有望な開発パイプライン保有企業を、
企業ごと買収する、
これを巷では、
「ファイザーモデル」と呼んでいます。
さて、ファイザー社の有名な製品と言えば、
まずなんといっても、
高血圧治療薬である「ノルバスク」(アムロジピン)と
高脂血症治療薬である「リピトール」(アトルバスタチン)が挙げられるでしょう。
「ノルバスク」(アムロジピン)は、
かつて、世界中で莫大な売上(5,000億円以上)を誇り、
当時は、「ノルバブル」と呼ばれていたりしました。
それほど、当時は、バブリーな医薬品であり、
ファイザー社の急成長に多大なる貢献をした薬剤の1つでした。
ノルバスクを使っていない施設はないんじゃないか、と思うほど、
使用先施設は、とてつもなく多かったです。
もちろん、今でも後発品が多くの施設で使用されています。
また、高脂血症治療薬「リピトール」もファイザー社の製品で
最も有名な製品の1つです。
これも世界中で売れに売れまくり、
超ブロックバスターになった製品の1つです。
なんと1兆2,000億円以上の売上高を誇った製品です。
プライマリーの製品でこれほどの売上は、
驚異的です。
「リピトール」はもともと、ファイザー社がかつて買収した企業である、
「ワーナー・ランバート」社が創製した製品です。
ファイザー社は、この「リピトール」の将来性に賭け、
当時のワーナー・ランバート社を買収しました。
結果として、この買収は大当たりでしたね。
ファイザー社が急成長と遂げた要因の1つともなった薬剤です。
一方、ノルバスクは、ファイザー社の自社製品です。
「ノルバスク」と「リピトール」という生活習慣病薬は、
ファイザー社の成長の要となった薬剤なのです。
さらに、ファイザー社は、抗生物質や抗真菌薬といった感染症治療薬でも
かつて多くの売上を誇った企業です。
そんな生活習慣病や感染症といった、内科系領域を得意としている
ファイザー社ですが、現在ファイザー社が注力している領域は
何でしょうか。
現在のファイザー社が注力している領域を見てみますと、
下記の5つの領域です。
①代謝及び循環器系(内科系)
②希少疾患(オーファン)
③炎症及び免疫(自己免疫疾患、関節リウマチ等)
④オンコロジー(がん)
⑤ワクチン
の5つです。
昨年度(2017年度)まで、
中枢神経(CNS)領域にも力を入れていましたが、
なんと、2018年、今年の1月にグローバルから、中枢神経(CNS)領域から撤退する旨の発表がありました・・・。
衝撃的な発表でしたね・・・。
ファイザー社は、今後、中枢神経系領域の研究開発を一切辞める、
ということですよ・・・。
ファイザー社のCNS領域には、
ブロックバスターである神経疼痛治療薬「リリカ」や
現在では、すでに特許が切れ、後発品が発売されていますが、
かつて、そこそこの売上を誇った、抗うつ薬であるSSRIの「ジェイゾロフト」、
最近では、SNRIの「イフェクサー」があるんですけどね・・・。
思い切った決断をしましたね・・・。
「ジェイゾロフト」はすでに特許が切れてますので、
注力することはほとんどない製品ですが、「イフェクサー」はまだ伸びている製品ですし、
「リリカ」はまだ全世界でなんと、5,000億円ほど売れている製品ですからね・・・。
「リリカ」の特許は、ヨーロッパではすでに特許切れですが、
日本とアメリカでは、まだぎりぎり特許が切れてない状況です。
「リリカ」は、
日本では、ファイザー社とエーザイ社がコ・プロしている製品であり、
ファイザー社の日本法人としても、かなり力を入れている製品であり、
現在の主力製品の1つです。
その領域から撤退するとは・・・。
ファイザー社はかつて、CNS領域にも力を入れ、
今後、アルツハイマーやパーキンソン病にも注力する、と
宣言していたはずなんですが・・・。
世界的な大企業といえども、
選択と集中を迫られている、ということですね・・・。
まあ、確かに、アルツハイマーは、どの製薬会社も研究開発が軒並み失敗続きで、
もう何年も新薬が出ていない状況ですし、パーキンソンはアルツハイマーよりは新薬が
発売されていますが、決して開発が容易な領域ではありません。
そう考えると、
ファイザー社のCNS撤退は、賢明な判断なのかもしれません。
それにしても、ファイザー社のCNS撤退は驚きましたね・・・。
プライマリー領域からの撤退を発表した企業は、いくつかありますが、
CNS領域からの撤退を発表した企業は、なかなかないですよ。
ということで、
現時点では、悲しいことに、
今後、ファイザー社から、中枢神経(CNS)領域からの
新薬が出ることはないでしょう・・・。
では他の領域を見てみましょう。
現在のファイザー社の製品ラインナップは、
上記に挙げた通り、中枢神経系を除くと、
①内科系、②オーファン、③炎症及び免疫、④がん、⑤ワクチン、
といった、5つの領域の製品があります。
2016年のファイザー社の製品別売上高(全世界)TOP20を見てみます。
【ファイザー社 製品別売上高(2016年度)単位は百万ドル】
①プレベナー(肺炎球菌ワクチン):5,718(前年比- 8.4%)
②リリカ(疼痛治療) :4,966(前年比+2.6%)
③エンブレル(関節リウマチ) :2,909(前年比-12.7%)
④イブランス(乳がん) :2,135(前年比+195.3%)
⑤リピトール(高脂血症) :1,758(前年比-5.5%)
⑥バイアグラ(ED治療) :1,564(前年比-8.4%)
⑦スーテント(腎がん) :1,095(前年比-2.2%)
⑧プレマリン(エストロゲン製剤):1,017(前年比-0.1%)
⑨ノルバスク(高血圧) :962(前年比-2.9%)
⑩ゼルヤンツ(関節リウマチ) :842(前年比+77.2%)
⑪チャンピックス(禁煙補助薬) :842(前年比+25.5%)
⑫セレコックス(抗炎症薬) :733(前年比-11.7%)
⑬プリスティーク(抗うつ薬) :732(前年比+2.4%)
⑭ベネフィクス(血友病B治療薬) :712(前年比-5.3%)
⑮ブイフェント(抗真菌薬) :590(前年比-13.5%)
⑯ジェノトロピン(成長ホルモン):579(前年比-6.2%)
⑰ザーコリ(肺がん) :561(前年比+15.0%)
⑱リファクト(血友病A治療薬) :554(前年比+3.9%)
⑲メドロール(ステロイド) :450(前年比+11.9%)
⑳ザイボックス(抗菌薬) :421(前年比-52.3%)
TOP20の中で、
前年比プラスの製品は、8/20品目です。
残りの12品目は、前年比マイナスの製品であり、
マイナスの製品はほとんどの製品が、
特許が切れ、後発品が発売されている製品です。(日本ではまだ特許が切れていない製品もあります)
売上TOP20の中には、
リピトール(高脂血症)、ノルバスク(高血圧)、セレコックス(抗炎症薬)といった、
かつてのファイザー社を代表するような製品や、
抗菌薬といった感染症領域の製品もあり、
感染症領域もかつてのファイザー社が得意としていた領域の製品ですね。
前年比がプラスになっている製品は、
「リリカ」(疼痛)、「イブランス」(乳がん)、「ゼルヤンツ」(リウマチ)、
「チャンピックス」(禁煙補助)、「プリスティーク」(抗うつ薬 日本未発売)、「ザーコリ」(肺がん)、
「リファクト」(血友病A 日本未発売)、「メドロール」(ステロイド)、
といった8品目あります。
8品目の中で、注目すべき製品は、
前年比が大きく伸びている、下記3品目です。
①乳がん治療薬「イブランス」(+195.3%)
②関節リウマチ治療薬「ゼルヤンツ」(+77.2%)
③肺がん治療薬「ザーコリ」(+15.0%)
この3製品を1つずつ見ていきますと、
まず、乳がん治療薬である抗がん剤「イブランス」は、
昨年12月、日本でも発売され、大きな話題となっている製品です。
乳がん治療薬の中で、新しい作用機序の製品であり、
CDK4/6阻害薬です。
すなわち、分子標的薬(低分子化合物)です。
CDK4/6というタンパク質(酵素)は、
細胞が増殖する、細胞周期の進行に関わっており、これを止める(阻害)することで、
がん細胞の増殖を抑える(細胞分裂を抑制する)薬剤です。
乳がん治療薬では、ホルモン製剤が多く使用されている現状があります。
これには、理由があり、乳がんの進行がエストロゲン等のホルモン分泌に依存するタイプがあり、
これを止めることで、進行を抑制できるからです。また、ホルモン製剤ですので、
比較的副作用が少ない、という特徴があります。そのため多く使用されています。
ファイザー社の「イブランス」は、ホルモン製剤ではなく、分子標的薬であり、
画期的な作用機序と治療ラインが1stや2nd以降でも使用できること(臨床試験において1stでも2nd以降でも使用できるよう組んだ)から、
治療の選択肢が広がることもあり、急速な勢いで世界中で浸透が進んでいる薬剤です。
副作用としては、一定の副作用発現はあるものの、対処できる副作用が多く、
使用に関して、そこまで問題とはなっていないのが現状です。
とても使いやすい、と言える薬剤ではないが、副作用もある程度対処でき、
効果も期待できそうで、使用ラインの幅も広く、多くの可能性に秘めた薬剤、
それが「イブランス」です。
「イブランス」の日本での売上高はまだ公表されていませんが、
海外では2015年に発売されており、すでにブロックバスターになっていることから、
(イブランス(乳がん)の2016年度の売上高:2,135(前年比+195.3%))
注目すべき製品ですね。前年比も凄まじいです・・・。
そして、
経口の関節リウマチ治療薬である「ゼルヤンツ」(JAK阻害薬)も
数年前から、とても注目が集まっている製品ですね。
「ゼルヤンツ」はJAKを阻害することで
作用を示す薬剤ですが、この「JAK」(ヤヌスキナーゼの略です)というのはたんぱく質(酵素)のことです。
どのような酵素かというと、
炎症性サイトカインである、TNF-αやIL-6等が炎症を引き起こす際、
それらが各受容体に結合して、炎症が引き起こされますが、各受容体には、JAKと呼ばれる
酵素が存在しており、JAKを介して、炎症シグナルが、核に伝わります。
ということは、JAKを阻害することで、核へのシグナルが阻害され、炎症が伝わりにくくなる、ということです。
このJAKは、いくつかのサイトカイン(IL-6等)に存在することがわかっており、
マルチに各受容体へのシグナル伝達を抑制するため、マルチターゲット型の薬剤です。
もちろん、このような人体の免疫機能の調節に関与する
サイトカインを阻害する(正確にはJAK阻害ですが)ため、
副作用も免疫系の副作用の発現が起こることがあります。
すなわち、免疫機能異常による感染症(結核、肺炎、敗血症等)です。
他にも肝機能異常や発がん等も頻度は高くありませんが知られており、
使用前には十分な検査を実施し、使用には注意が必要な薬剤です。
また、今までの「レミケード」等の関節リウマチに使用する生物学的製剤は、
すべて注射剤であり、注射剤ということは、患者さんに痛みが伴うこともあり、
嫌がる患者さんも多かったのですが、今回の「ゼルヤンツ」は注射剤ではなく、
経口薬である、というメリットもあります。
「ゼルヤンツ」の作用機序は、上記に記載した通り、
生物学的製剤に近く、注射剤ではなく、経口薬であり、
関節破壊抑制効果も生物的製剤と極端な差はない、と言われているため、
今後、ますます使用が促進するかもしれません。
2016年度の「ゼルヤンツ」の売上高も
8.42億ドル(前年比+77.2%)と前年比が+77.2%ですので、
順調に売上を伸ばしていますね。
そして、3つの「ザーコリ」(肺がん治療薬)ですが、
この薬剤は、肺がんの中でも、特定の遺伝子変異に対する肺がん治療薬です。
特定の遺伝子変異というのは、
ALKという遺伝子と、ROS1という遺伝子変異に対する治療薬です。
この遺伝子変異が陽性でなければ、
この「ザーコリ」という薬剤は使用できません。
では、どのくらいの割合で、
この特定の遺伝子変異である、ALKやROS1の陽性の患者さんが
いるかというと、肺がん患者さんのわずか1~5%です。
したがって、かなり患者数としては少ないものの、
これらの遺伝子変異に対する有効性はある程度認められているため、
これらの遺伝子変異がある患者さんは、使用されることが多いです。
特に、ROS1が陽性の患者さんに対する治療薬は、
この「ザーコリ」しか現在、存在しないため、ROS1に対する治療薬という
確立したポジションがあります。
そのため、一定の売上は常に確保できている状況です。
まさに現時点では、「ザーコリ」は、唯一無二の薬剤ですね。
以上、2016年の製品別売上において、
前年比が大きくプラスになっている
3製品を振り返って見ましたが、
3製品中2製品が抗がん剤(オンコロジー)製品です。
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ファイザー社は、以前から、
オンコロジー領域を重点領域に挙げており、
オンコロジー領域に注力すると宣言していますので、
当たり前のことかもしれませんが、
年々、ファイザー社の製品群の中で、
オンコロジー製品が占める割合が多くなっています。
実際、2016年度の内訳では、
後発品等の特許が切れた製品群(EH事業:後発品等)を除いて、
IH事業(主に先発品)のオンコロジー領域が占める割合を見てみますと、
15.6%であり、前年比は、54.4%と、どの領域よりも、
前年比が大きく伸長しています。
2016年の段階では、オンコロジー領域が占める割合は、
15.6%ですが、今後さらに高まるでしょう。
また、上記の中には含まれていませんが、
ファイザー社がBMS社と共同販売している
抗凝固薬Xa阻害薬「エリキュース」も全世界で1500億円以上(2017年度)の
売上を誇るブロックバスターであり、もちろん国内でも順調な売上を上げている製品です。
さらに、昨年度(2017年度)、
今話題の免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-L1抗体、
「バベンチオ」(アベルマブ)が発売され、期待が高まっています。
そして、つい先日には、
2018年7月には、「レミケード」(インフリキシマブ)の
バイオシミラーがファイザー社から発売され、
こちらも話題になっています。
「ますます勢いづくファイザー社」といった
ところですね。
現状はそんなところです。
ファイザー社の現状を、
2016年度の売上総収益から振り返ります。
2016年度、TOP20製品の中で、
前年比マイナスの製品が12品目、
前年比プラスの製品が8品目という現状でした。
それにもかかわらず、
2016年度のファイザー社(グローバル)の
総売上収益は、528億ドル(約5兆2800億円)であり、
前年比が+8.1%という業績でした。
前年比がマイナスの製品が多い中、
売上収益がプラスになっていることは凄いことですね。
その理由としては、
上記に挙げた大きく伸長している、
オンコロジー製品の乳がん治療薬「イブランス」、
肺がん治療薬「ザーコリ」、
そして関節リウマチの「ゼルヤンツ」が順調に伸びている、
ことが理由の1つです。
他にもコ・プロ製品ですが、
抗凝固薬でありXa阻害薬の「エリキュース」が1500億円以上の売上を挙げており、
臨床試験の良いエビデンスも発表されたため、さらに伸びる見込みであり、
最近では、昨年度(2017年)、発売した抗PD-L1阻害薬「バベンチオ」、
先日(2018年7月)発売した「レミケード」のバイオシミラーの発売があり、
今後も売上総収益は、前年比プラスが続きそうです。
では、今後の開発パイプラインはいかがでしょうか。
国内での臨床試験を実施している開発中の新薬を見てみますと、
下記のような状況です。
【ファイザー社 国内開発中の新薬 2018/8/31 現在】
肺がん治療薬
・ダコミチニブ(EGFR陽性 非小細胞肺がん)
・ロルラチニブ(ALK陽性 非小細胞肺がん)
急性骨髄性白血病
・PF-04449913(glasdegib)
変形性関節症、慢性腰痛症、がん性疼痛
・PF-04383119-SC(tanezumab)
アトピー性皮膚炎
・PF-04965842
感染症予防ワクチン(初発のクロストリジウム・ディフィシル感染症の予防)
・PF-06425090(ワクチン)
・PF-06290510(ワクチン)
希少疾患(デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))
・PF-06252616(ドマグロズマブ):モノクローナル抗体
以上の製品が国内で開発中であり、
他、適応追加の製品も上記には載せていませんがいくつかあり、
例えば、抗PD-L1抗体「アベルマブ」が、腎がん、卵巣がん、尿路上皮がん等、
いくつかの適応で臨床試験が実施中です。
ざっくりとですが、
開発中の新薬には、
①オンコロジー、②ペイン(痛み)、③ワクチン、④皮膚、⑤オーファン、
という5つの領域の製品が開発中ですね。
ファイザー社の開発品を上から順に見ていきます。
まず、「ダコミチニブ」ですが、
この薬剤は、EGFRという遺伝子変異陽性の患者さんに使用できる、
非小細胞肺がん治療薬(分子標的薬)です。
「ダコミチニブ」の第Ⅲ相の「ARCHER1050試験」によりますと、
対象群の「イレッサ」と比べ、OS(全生存率)が有意に延長したのデータが
先々月発表されました。OS:イレッサ 26.8カ月 vs ダコミチニブ 34.1カ月、とのことで、
生存率を7カ月以上、延長できるかもしれない、とのことです。
「イレッサ」は、AZ社の製品であり、かつて間質性肺炎等で
話題となった製品です。
オンコロジー製品で、生存率であるOSを、有意延長することは、
かなり難しいことが多いのですが、見事、有意差がついており、
期待できる結果が発表されています。
次に、同じ肺がんの治療薬ですが、
ALKという遺伝子変異陽性の患者さんに使用する、
非小細胞肺がん治療薬が「ロルラニチブ」です。
EGFR陽性の方には使用できません。
ALK陽性のみです。
「ロルラニチブ」は、
第3世代のALK-TKIと呼ばれている分子標的薬です。
既存のALK阻害薬で耐性ができ、効きにくくなった、もしくは
ほとんど効果がなくなった患者さんにも、効果が期待できる薬剤です。
抗がん剤に限らずなのですが、
多くの抗がん剤では使用して約1年ほどで耐性ができ、
効果がなくなってしまうことが多いという現状があります。
「ロルラニチブ」はそんな耐性のできたALK陽性の患者さんに効果が期待できる
薬剤です。
「ロルラニチブ」は今年の6月に、国の優先審査指定を受けた医薬品であり、
ますます期待が高まっています。
現在は、2次治療依頼で、申請をしていますが、
1stラインの臨床試験も進行中であり、既存の1stライン治療の「アレセンサ」(中外製薬社)と比べて、
どのような位置付けとなるのか、注目です。
次に、急性骨髄性白血病治療薬「glasdegib」ですが、
この薬剤も優先審査指定(2018年7月30日付け)を受けている薬剤です。
ただし、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)からの
優先審査指定です。
それだけ価値の高い医薬品である、ということです。
急性骨髄性白血病(AML)は、
米国では、5年生存率が約25%と、決して高い生存率である、とはいえない状況であり、
AML領域における新薬開発が期待されています。
日本でのAMLの生存率は、もう少し高いですが、
それでも治療が遅れてしまったり、強い抗がん剤を投与しますので、
治療に耐えられないと想定される場合には、有効な治療法が少ないことが多いです。
そのため、このAML領域は、国内外問わず、
新薬開発がとても期待されている分野です。
「glasdegib」は、
新規作用機序の薬剤であり、Smoothened(SMO)阻害剤です。
SMO(スムーズンド)とは、
簡単に説明しますと、
膜タンパク質のことです。
膜タンパク質ですので、
細胞「膜」に存在している(細胞膜上に)と考えられており、
受容体のような役割を果たすと考えてられています。
受容体では、と思われるかもしれませんが、
現時点ではわかっておらず、受容体のような役割をする、膜に存在するタンパク質である
と言われています。
SMOは、具体的には、7回貫通膜タンパク質(GPCR)の一種です。
12回貫通タンパク質である「PTCH」の下流に位置し、核へのシグナル伝達に
関与しているタンパクです。
膜タンパクは、核へのシグナル伝達に関与しているタンパク質であるため、
これを阻害することで、細胞膜から核へのシグナル伝達をブロックし、
細胞増殖(がん細胞増殖)を抑制する、という作用機序です。
まだ、SMO阻害薬は、どの薬剤も上市していません。
すべて開発中です。
このSMOは、基底膜細胞癌や髄芽腫に多く存在することがわかっており、
急性骨髄性白血病にも有効であるといわれています。
では、実際の臨床試験データを見てみますと、
「glasdegib」の第Ⅱ相臨床試験(BRIGHT 1003試験より)では、
「glasdegib」と低用量シタラビンの併用療法は、
低用量シタラビン単独の場合と比較して、
OSの有意な改善を示しています。(8.8カ月 vs 4.9カ月 HR:0.501)
そのため、FDAから優先審査指定を受けています。
まさにアンメットニーズのあるAML領域。
上市できるといいですね。
続いて、
変形性関節症や慢性腰痛治療薬「tanezumab」ですが、
これは、生物学的製剤であり、ヒト化モノクローナル抗体です。
NGFを選択的に標的として結合し、
阻害することで作用する薬剤です。
NGFとは、神経成長因子のことであり、体内のNGF濃度は、
外傷や炎症、または慢性疼痛の状態にあることが原因で上昇します。
「tanezumab」は、NGFを阻害することで、筋肉、皮膚および臓器で発生する
疼痛シグナルが脊髄および脳に到達しないように作用する、と考えられています。
「tanezumab」は、
オピオイドや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などのその他の鎮痛薬とは、
全く異なる新しい作用機序を有しています。
そのため、「tanezumab」」は、FDAからの
ファストトラック指定を受けている薬剤です。
「ファストトラック指定」とは、
重篤な疾患を治療し、アンメットメディカルニーズを満たす新薬の開発を促進し、
審査を迅速化する制度であり、
「tanezumab」は米国でファストトラック指定を取得した初めてのNGF阻害薬です。
優先審査とはまた別の指定品です。
さらに、
アトピー性皮膚炎治療薬「PF-04965842」ですが、
この薬剤は、関節リウマチの「ゼルヤンツ」と同じJAK阻害薬であり、
炎症性サイトカインに存在するJAKを阻害することで、核へのシグナル伝達を抑制する薬剤です。
「PF-04965842」は、
湿疹の発症機序に関与するTh2炎症を引き起こすIL-4 、IL-13および IL-31に影響を与
えると考えられています。
JAK 阻害薬は、内服ステロイドおよび外用ステロイド
それぞれと同等の効果を持っていると考えられており、
有効性が期待されている薬剤です。
しかし、JAK 阻害薬には血小板減少症や肺塞栓症、その他の重篤な有害
事象がみられることが懸念されており、
また、JAK 阻害剤には特有の副作用があり、
CPK値上昇、感染症、消化器系副作用(炎症性腸疾患患者および関節リウマチ患者に多くみられる結腸
破裂など)および造血系副作用が知られており、
JAK 阻害薬を使用する際は、事前検査と投与量を慎重にモニタリングしながら、
使用すること推奨されます。
開発品の最後に、
筋ジストロフィー治療薬「domagrozumab」がありますが、
これは、ヒト型モノクローナル抗体です。
4週間に1回静注する注射剤で、現在国内フェーズⅡです。
筋ジストロフィーは、国内では患者数が約25,000人と、
稀な疾患であり、難病に指定されています。
筋ジストロフィーは、遺伝子に変異がおきることにより、
筋力が低下し、歩行や呼吸等に障害がおきる疾患ですあり、
有効な治療薬がなく、新薬の上市が大いに期待されている疾患です。
この薬剤が上市されれば、
臨床試験で有効性が期待できる、
世界発の筋ジストロフィー治療薬になるかもしれません。
以上、ファイザー社の開発中の新薬について、
ご紹介しました。
長くなりましたので、
最後に、
ファイザー社の現状と将来性をまとめます。
【ファイザー社の現状
①重点領域は、「循環器及び代謝」(内科系)、「オンコロジー」、「オーファン」、「炎症免疫」、「ワクチン」の5領域。
②2016年度の売上総収益は、プラスだが、前年比マイナスの製品の方が多い。(TOP20製品に関して)
③オンコロジーや免疫領域の伸長が顕著である。特に、「イブランス」(乳がん)や「ゼルヤンツ」(関節リウマチ)。
④コ・プロ製品ではあるが、循環器領域の「エリキュース」(抗凝固薬Xa阻害薬)が順調である。売上1,500億円以上。
⑤ここ1年ほど、抗PD-L1抗体「アベルマブ」や「レミケードバイオシミラー」といった話題のある製品の発売が相次ぐ。
ということで、ファイザー社の現状として、
オンコロジー領域の「イブランス」(乳がん)や炎症・免疫領域の「ゼルヤンツ」、
循環器の「エリキュース」が大きく伸長しているため、総売上収益が前年比プラスになっています。
これらの製品の特長として、唯一無二な製品であることが挙げられます。上手く市場のニーズを掴み、
他社にはない作用機序の製品を、できるだけ早く発売し、確実に売上に繋げています。
【ファイザー社の将来性」
①「イブランス」(乳がん)、「ゼルヤンツ」(関節リウマチ等)、「エリキュース」(抗凝固薬)といった、新規作用機序の新薬が、市場ニーズを上手く掴んでおり、今後さらに伸びると予想される。
②アンメットメディカルニーズに注力している結果、オンコロジー領域で、期待の新薬が近々発売予定である。
③開発パイプラインは、国内や米国で、優先審査指定を受けた製品が3品目以上あり、今後に期待が持てる。
④画期性や新規性に注目して研究開発を進めているが、中枢神経(CNS)領域からの撤退はまだ早すぎたのでは・・・。
⑤話題の免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-L1抗体の「アベルマブ」は、競合が激しい中、市場価値を見出せるか。臨床試験次第である。
ということで、
期待の新製品の(国内)上市がここ数年、控えていることから、
ファイザー社の今後や将来性に大いに期待ができそうです。
以上、ファイザー社の将来性について、
私の独断と偏見で、ご紹介致しました。
ご参考までに。
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