糖尿病治療薬(DPP4とSGLT2)

糖尿病治療薬DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の現状について

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今回は、
糖尿病治療薬DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の現状について、
ご紹介します。

糖尿病領域は今も昔も
競合が激しい領域の1つですが、
確実に糖尿病治療薬を担当していた時よりも、
現在の方が競合が激しいですね。

糖尿病は、現在、
一番激戦区の領域かもしれません。

そんな糖尿病領域ですが、
現在、糖尿病治療薬である「DPP4阻害薬」と「SGLT2阻害薬」は、
各社、どのような取り組みをしているのでしょうか。

またどのような現状なのでしょうか。

各社の現状や取り組みについて、
私が把握している範囲ですが、ご紹介します。

まず、DPP4製剤の中で
現在、一番売れている品は何でしょか。

一番売れているDPP4阻害薬は、
MSD社/小野薬品社の「ジャヌビア/グラクティブ」(シタグリプチン)ですね。

「ジャヌビア」だけで、
2016年度の段階で国内でなんと700億円以上もの売上高があります。

しかし、ジャヌビアはすでにピークアウトを
迎えており、今後、売上が急上昇する可能性は
低く、少しつづ売上は減少していくでしょう。

ジャヌビアは、MSD社の製品ですが、
MSD社から、週一回投与のDPP4製剤も発売しています。

「マリゼブ」ですね。
MSD社は、現在、ジャヌビアのシェアを維持しつつ、
マリゼブにも力を入れています。

一方、武田薬品社とノバルティス社は、
MSD社の取り組みとは多少異なり、
それぞれのDPP4阻害薬である「ネシーナ」と「エクア」を
自社の他剤に切り替え中です。

 

武田薬品社:「ネシーナ」→「ザファテック」(DPP4の週一回製剤)

ノバルティス社:「エクア」→「エクメット」(エクアとメトホルミンの配合剤)

という流れです。

 

武田薬品社は、「ネシーナ」から「ザファテック」や
その他の配合剤に切り替え促進しています。

「ザファテック」は2015年に発売した武田薬品社の
週一回のDPP4製剤です。

また、ノバルティス社もDPP4製剤である
「エクア」の売上がピークを迎えており、

現在、「エクア」から「エクメット」への
切り替えを促進しています。

「エクメット」は「エクア」と「メトホルミン」の
配合剤です。

「エクメット」は、
2016年の段階で、110億円ほど売上があります。

エクアから切り替えていることもあり、
それなりに売上が上がっていますね。

また、エクメットは、メトホルミンとの合剤であり
このメトホルミンの用法・用量が
1日2~3回の服用ということもあり、
エクアは1日2回投与ですので、
ちょうど投与回数的にもマッチします。

一方、武田社のメトホルミンとネシーナの
合剤である「イニシンク」は1日1回投与なんですよね。

イニシンクは、昨年12月に発売したばかりの
製品であることと、用法・用量がメトホルミンの1日2~3回と
異なる配合剤のため、新薬扱いになり、長期処方がまだ解禁してい
ないんです。そのため、使いづらい薬剤になっています・・・。

エクアはメトホルミンと用法(1日2回)の観点で
相性が良いが、ネシーナは用法(1日1回)観点では
メトホルミンと相性がやや悪い薬剤です。

また、メトホルミンはそもそも効果が
やさしい薬剤ですので、1日1回投与だけで効果があるのか?
と言われています。

イニシンクの投与回数は1日1回ですからね・・・。

「エクメット」はそれなりに順調ですが、
「イニシンク」は果たして・・・。

 

さて、3社のDPP4製剤(単剤)の現状は、

①ジャヌビア/グラクティブ(MSD社/小野薬品社)→すでにピークアウト

②ネシーナ(武田薬品社)→すでにピークアウト

③エクア(ノバルティス社)→すでにピークアウト

のようになっており、

 

その結果、

①ジャヌビア(MSD社)→ジャヌビアを維持しつつ、マリゼブ(週1DPP4)に注力

②ネシーナ(武田薬品社)→ザファテック、その他配合剤に注力

③エクア(ノバルティス社)→エクメット(配合剤)に注力

という現状です。

 

注目すべきは、

 

武田薬品社とノバルティス社は、
自社の他剤(週一回製剤や配合剤)に切り替え中ですが、
MSD社は自社の他剤には積極的に切り替えおらず、
やはりジャヌビアの売上高が700億円以上もあるせいか、
ジャヌビアの売上を維持増量しつつ、
週一回DPP4製剤の「マリゼブ」にも注力しているところです。

今後も、しばらくこの流れは続きそうです。

そして、上記3剤のDPP4阻害薬(単剤)は
すでにピークアウトを迎えている中、
順調に売上を伸ばしているDPP4製剤が、「トラゼンタ」(リリー社/ベーリンガー社)です。

2016年度の段階で、国内で380億円ほどの売上があり、
前年比プラスで、順調に伸びています。

「ネシーナ」や「エクア」単剤の売上を
超えましたね。「ジャヌビア」に次ぐ2番手になりました。

トラゼンタは、使用患者の縛りが他剤と比べ、
ほとんどなく、腎機能や肝機能低下傾向のある患者さんにも
使いやすいのが特徴です。

特に、今までの、DPP4阻害薬は腎機能低下傾向の
患者さんには使用注意であり慎重投与でしたが、
トタゼンタはその製品特性上、代謝経路が異なり、
排泄経路が腎排泄ではなく、胆汁排泄(すなわち糞中排泄、尿排泄ではない)のため、
腎機能による影響を受けにくく、腎機能障害の患者さんにも
比較的安心して使用できます。

また「テネリア」(田辺三菱社/第一三共社)も同じく使いやすい薬剤ですね。

「テネリア」も腎排泄の影響を受けにくく比較的使用しやすい薬剤ですが、
「トラゼンタ」との違いは、肝代謝の影響も受けるため、肝機能障害のある
患者さんには使用しにくく、また、QT延長の患者さんや心不全のある患者さんには、
慎重投与であり、注意が必要です。

ただし、効果に関しては、
「テネリア」は「トラゼンタ」より強く、増量もしやすいため、
使いやすいと言われています。

とういうことで、テネリアは、他のDPP4と異なり消失経路が、
肝代謝・胆汁排泄が2/3、腎排泄が1/3ですので、
腎機能障害のある患者様にも用量調節不要で
増量もしやすいが、肝代謝に関して2/3の影響を受けるため、

肝機能障害のある患者さんにはやや注意が必要です。

しかし、効果に関しては、「トタゼンタ」よりは「テネリア」の方が強いと言われています。

テネリアは田辺三菱社の自社開発品であり、
日本製のDPP4阻害薬です。

そのため、日本人データも他のDPP4と比べ
豊富であると言われています。

「テネリア」の2016年度の売上高は、
240億円ほどであり、もちろん前年よりは
売上は伸びていますが、まだまだ「トラゼンタ」(380億円)には
届かない状況ですね。

発売時期がトラゼンタの方がテネリアより
一年早かったこともあり、トラゼンタにどこまで追いつけるかと
いった状況です。

ということで、「トラゼンタ」と「テネリア」は、

・「トラゼンタ」(リリー社/ベーリンガー社)→順調にシェア獲得、今後も伸びる

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・「テネリア」(田辺三菱社/第一三共社)→伸びてはいるが、トラゼンタに追いつけるか

といった現状です。

 

そして、「スイニー」と「オングリザ」を見てみますと、

スイニー(興和社/三和社)は、少しつづ伸びてはいますが、やはり競合製品も
多く苦戦している印象です。

スイニーの特徴として、他のDPP4製剤にはあまりない、中性脂肪改善効果がよく知られています。

LDL低下作用です。

2型糖尿病の患者さんの中には高脂血症である患者さんも結構いますので、
2型糖尿病であり、なおかつ、高脂血症の患者さんや肥満傾向の患者さんに
マッチと言われています。

また、スイニーの用法が1日2回であり、それが賛否分かれるところでもあります。

「オングリザ」(協和発酵キリン社)は国内では一番最後に発売したDPP4製剤ですが、
アメリカでは、ジャヌビアに次ぐ2番目に発発売した製品です。

そのため、海外での使用実績が2番目に多いDPP4製剤であり
エビデンスもそれなりに存在する薬剤です。

2016年度の段階で売上高は、62億円であり、今後も少しつづ伸びていく
と予想されますが、海外での使用実績とエビデンスを武器にどこまで伸ばせるか、ですね。

 

続いてSGLT2阻害薬の現状を見てみます。

SGLT2阻害薬で一番売れている薬剤は、「スーグラ」ですね。

「スーグラ」は、アステラス社/MSD社の製品です。
アステラス社とMSD社がコプロしています。

スーグラは、2016年度の段階で、国内で95億円ほどの売上高です。

SGLT2阻害薬に関しては、発売後、脱水による高齢者の死亡例や低血糖、
感染症、皮膚障害が報告され、学会からの注意勧告もあり、
一時、使用が制限されていました。

現在では
安全性や使用方法等もある程度確立し、
SGLT2阻害薬全体的に、少しづつ上昇気流が見られています。

今後、どこまで上昇気流に乗れるか、といった状況ですね。

「スーグラ」は国内で一番初めに発売されたSGLT2阻害薬ですが、
海外では「フォシーガ」(小野薬品社/AZ社)が世界で一番初めに発売されたSGLT2阻害薬です。

「フォシーガ」は2016年度の段階では、売上高78億円です。
スーグラに次ぐ2番手です。
海外での使用実績やエビデンスという観点ではフォシーガはかなり有利であり、
どこまでスーグラに追いつけるか、といったところですね。

そして、SGLT2阻害薬の中でエビデンス的に
一番有利なのが「ジャディアンス」(リリー社/ベーリンガー社)です。
EUで発表された大規模臨床試験にて、心血管死のリクスをプラセボと比べ有利に38%減少させた
という結果が報告されたのです。

なんとこの結果は、欧州でのジャディアンスの添付文書に記載される、とのことです。
2型糖尿病治療薬の唯一、心血管イベント減少効果について、添付文書に記載される薬剤となります。

ただし、日本でのジャディアンスの添付文書への記載に関しては、現段階では不明です。

しかし、それでもこのインパクトは絶大で、
SGLT2阻害薬の中で大きな存在感を放っています。

ジャディアンスの2016年度の売上高は、41億円とそこまで高くはありませんが、
2015年2月に発売したことと、前年比がなんと813%増、
という状況を見ると、やはり凄まじい伸び率です。

今後もこのエビデンスを超えるデータが出ない限り
製品的な優性はジャディアンスにあるものと予想されます。

もちろん販売戦略や訴求の仕方にもよりますけどね。

SGLT2阻害薬の大規模臨床試験と言えば、
ジャディアンスだけでなく、カナグルも海外ですでに
発売されており、データが出ています。

ただし、カナグルに関してはややネガティブな発表がされており、
欧州では、カナグル使用時における下肢切断が懸念されています。どこまでカナグルが関係しているのか、現時点では不明ですが、有意差がついたデータもでており、
現時点では、エビデンス的に、やや不利な状況です。

もともと糖尿病には下肢切断のリクスもありますが、
それがカナグルを使用するとそのリクスが上がるのか、たまたまなのか、
よくわかっていません。

今後もさらなる臨床試験の追加発表等あるものと予想されます。

デベルザ/アプルウェイ(興和社/サノフィ社)に関しては、
SGLT2阻害薬の中で唯一半減期が短い薬剤であり、
その半減期の短さゆえ、夜間の頻尿が他剤に比べ
抑えられるのではないか、と言われています。

SGLT2阻害薬の副作用で多尿がありますから、
もしかしたら、夜間頻尿等でお困りの患者さんに合う薬剤になるのかもしれません。
エビデンスが発表され次第、明らかになるでしょう。

デベルザとアプルウェイは同じ
薬剤(トホグリフロジン)ですが、興和社とサノフィ社との併売です。

興和さんはDPP4もSGLT2も併売でとても大変ですよね・・・。

激戦区の中で、さらに併売・・・。
つらすぎます・・・。

そして、最後に
SGLT2阻害薬の「ルセフィ」ですが、「ルセフィ」は、
大正富山さんとノバルティスさんが同一製品名で販売している製品です。

大正さんのルセフィの2016年度の売上は、
29億円であり、まだまだこれから、といった状況です。

SGLT2阻害薬全体に言えることですが、
2014年にSGLT2阻害薬が各社から発売され、
その後、高齢者の脱水等で死亡例が報告され、学会からの注意勧告もあり、
2014年~2015年は使用しずらい状況が続きましたが、
現在では、使用方法や副作用マネジメントがある程度確立され、
患者さんの症状に合った使用を心がければ、
かつてのように脱水等を未然に防げることが多くなりました。

再び注目されつつあるSGLT2阻害薬ですが、
どこまで伸びるのかといった状況ですね。

SGLT2阻害薬は、作用機序がこれまでの糖尿病治療薬と異なり、
尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制し、
そのままブドウ糖を尿へ排出させるという画期的な作用機序から、
発売前から大いに期待されていた薬剤でした。

しかし、臨床試験中の脱水等は判明していたものの、
実際、市場で使われ始めると、臨床試験のように限られ、厳格に管理されていた
患者さん等とは異なり、限定されない多くの患者さんに使用されたことで、
副作用管理や症状に合った使用方法等を徹底することができず、使用が難しい薬剤であり、
高齢者等にも使用注意な薬剤という認識が広まり、使用が制限されるようになりました。

SGLT2阻害薬は、作用機序から、糖の再吸収抑制→尿として排泄→多尿→脱水
も予測できましたが、実際、多くの患者さん(高齢者等)に使用されて
しまいマイナスイメージが付いてしまった薬剤です。

「ジャディアンス」のように、
SGLT2阻害薬を使用することで心血管イベントを
有意に抑制できるエビデンスが発表されたことからも今後のさらなるSGLT2阻害薬の
伸長に期待したいです。

ということで、
DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬についての
現状をまとめてみました。

来年か再来年には、
GLP1製剤(注射剤)の経口剤が発売予定であり、
糖尿病領域はさらに激化していきますね・・・。

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コメント

    • 某内資系MR
    • 2017年 6月 18日

    間違いなく、今現在の再激戦領域でしょうね。
    SGLT2に関しては、まだまだ市場が発展途上なので、エビデンスも出てきて話題も豊富だし、これからだろうなって感じですね。
    多面的効果がとても優れている薬剤なので、これからのDM治療でもスタンダードな薬剤になるといいなと思ってます。
    ただ、DPP4に関してはSGLT2以上に厳しい状況なのかなと個人的には思ってます。
    というのも、この薬剤は既に市場がプラトーに達してしまっているので、純粋な新規投与ではなく、競合品からの切替を促さないと、なかなか売上が大きくならないかなと。
    仰る通り、トラゼンタとテネリアが今は伸びている状況で、さらに週一製剤も参入してきたりで、もはや物凄いことになってます。
    テネリアとカナグルの配合剤は利便性としては高そうですし、薬価負担を考えても良さそうですね。

  1. 某内資系MRさん
    コメント有難うございます。
    DPP4阻害薬の市場は、おっしゃる通り、プラトーに達している状況かもしれませんね。
    DPP4製剤は、単剤、配合剤、週一回製剤があり、シェア獲得のためには、新患だけでなく、他のDPP4から切り替えざるを得ない状況になっており、熾烈な争いが繰り広げられています。
    一方、SGLT2阻害薬に関しては、まだまだこれから、といったところですね。
    伸びる余地は十分ありますね。現在、SGLT2阻害薬のメリットが見直されつつあり、今後に期待が持てる薬剤です。薬剤そのものはどれも良いメリットを持っていると思いますので、適正使用が進めば、かなりの売上が期待できる薬剤ですね。
    また、DPP4とSGLT2の合剤も各社から発売予定ですね。
    国内では、田辺三菱さんの「カナリア」(テネリア+カナグル)が一番最初に発売予定であり、ジャヌビア+スーグラ(アステラス社)、トラゼンタ+ジャディアンス(ベーリンガー社)、オングリザ+フォシーガ、等、各社から合剤が発売予定ですね。
    さらに競合が激しくなりますね・・・。
    ヒロ

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