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いや~、久しぶりの更新になってしまいました・・・。
更新できなかった理由は主に2つあります・・・。
1つ目の理由として、
仕事が忙しくなってしまい、
ブログを更新する時間があまりなかったためです。
2つ目の理由として、こちらが主な理由ですが、
私用PCが故障してしまい、文字を打ったり、記事を作成することが
困難になり、私用PCが使えなかったためです・・・。
私用PCが使えないと色々不便ですね~。
先日、ようやくPCを買い替えましたので、ぼちぼち更新していきます!
もしまだこのブログを見てくださる方がいらっしゃれば、
引き続き宜しくお願い致します。
さて、今回取り上げるテーマは、
最近、話題となっている新しい治療法であり、
次世代のオンコロジー治療といわれている、
CAR-T療法について、です。
CAR-T療法は、細胞医療や免疫治療とも言われている、
遺伝子治療です。
今回は、そんなCAR-T療法について、ご紹介します。
まず初めに、
CAR-T療法を簡単に説明しますと、
CAR-Tとは、Chimera Antigen Receptor T cell therapyの略です。
日本語では、キメラ抗原受容体T細胞療法のことです。
いわゆる、がん免疫細胞療法のことです。
CAR-T療法の「CAR」はキメラ抗原受容体(Chimera Antigen Receptor)を意味しています。
そして、「CAR-T」の「T」はT細胞のことです。
CAR-T療法は、
患者さんから取り出したT細胞(体を異物から守る指示を出す細胞)に、
特定の抗原を認識するCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子を導入した(これがCAR-T細胞になります)、
組み換えT細胞を患者さんに投与する治療法です。
患者さんから取り出した細胞を使い、
再びその細胞を投与する、という方法はとても画期的な治療法ですね。
今までのほとんどの医薬品は、
低分子化合物等の「化学物質」でしたが、
今回のCART療法は、患者さん個々の「生きた細胞」を使って治療するのです。
この患者さん自らの細胞を使い、治療を行うという方法は、
現在、世界的にとても注目されています。
では、CART療法をやや詳しく説明しますと、
まず、患者さんの体内からT細胞を単離します。
そして、この単離したT細胞にCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子を搭載した
ウイルスベクター(ウイルスの運び屋のことです)を注入します。
これが、CAR遺伝子導入T細胞となります。
この細胞を拡大培養し、凍結保存し、解凍後、患者さんの体内に戻すことで、
組み換えT細胞に発現したCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子が
癌細胞上の抗原を認識し、活性化、増殖しながら、
長期にわたり、癌細胞の破壊を繰り返します。
CAR-T細胞は、CARのあるT細胞、すなわち、
強制的にがん抗原特異性をもったT細胞のことです。
T細胞は、もともと、がん細胞を破壊する役割を
もった良い細胞です。
T細胞は体内に入って来たがん細胞を
認識し、破壊し続けています。
そのため多くの人はがんになりにくくなっています。
(もちろんT細胞だけですべてのがん細胞が破壊できる
わけではないのですが・・・。)
しかし、がん患者さんは、このT細胞のシステムもしくは
他のどこかのシステムが異常を来たし、T細胞が働かなかったり、
どこかの免疫機能が異常を来たし、がん細胞が増殖し続けてしまいます。
CAR-T療法はこのT細胞の役割に注目し、
患者さんから取り出したT細胞にCAR遺伝子を人工的に導入することで
標的を認識する能力を与え、がん細胞を破壊する治療法です。
このCAR遺伝子が重要であり、
CARはキメラ抗原受容体のことですが、
このキメラ抗原受容体は、「がん細胞を狙い撃ちするもの」と
捉えるとわかりやすいかもしれません。
T細胞にがん細胞を狙い撃ちする遺伝子を組み入れたものが
CAR-Tであり、がん細胞を狙い撃ちするので、より高い効果を発揮できる
可能性がある、ということです。
まあ、CAR-T療法では、
そのようにしてがん細胞をやっつけるわけです。
そして、このCART療法ですが、
個々の患者さんの細胞を取り出して治療するわけですから、
オーダーメイド医療に
近い治療法を提供できます。
しかし、問題点もあります。
患者さん個々の細胞を使って治療するわけですから、一度使った患者さんの細胞は
当然使えません。そのため、患者さん一人一人の細胞を使い、
改変を加え、投与するわけですから、
莫大な費用が掛かりますよね。
昨年初めてアメリカでCART療法が承認され、2017年8月、
ノバルティス社から「キムリア」という製品名のCART療法発売されました。
CART療法で世界で一番はじめに発売された医薬品は、
昨年、2017年8月に発売した、ノバルティス社の「キムリア」(kymriah)です。
「キムリア」は、世界で一番初めにアメリカで上市されたCART療法です。
では、この「キムリア」の費用はいくらだと思いますか?
なんと一人、約5000万円です・・・。
凄まじい価格です。
当たり前の話ですが、患者さん個々に合わせた細胞を使いますんで、
製造コストがものすごくかかるんですよね・・・。
では、実際、アメリカでノバルティス社がとった行動ですが、
「キムリア」を使用するすべての患者さんに5000万円を請求するのは
あまりにも酷な話なので、
米ノバルティス社は、「キムリア」の成功報酬型の価格制度を導入しました。
すなわち、
「キムリア」を使用し、1カ月以内に効果があった患者さんのみ、
費用を請求する、という仕組みです。
これなら、キムリアを使って効果がなかった患者さんは、
治療費が無駄になることはほとんどありません。
しかし、1回の治療で5000万円という費用はいくらなんでも高すぎるので、
今後、見直されるかもしれません。
他のCAR-T治療薬として、
昨年10月に、アメリカのカイトファーマ社(Kite Pharma社)から世界で
2番目のCAR-T製剤が発売されました。
「Yeskarta」です。
カイト社は遺伝子治療等で有名なバイオベンチャー企業ですが、
昨年、ギリアド社に1兆3,000億円で買収されました。
「Yescarta」の日本での販売は、ギリアド社が行うかと思いきや、
日本での「Yescarta」の開発、製造、販売は第一三共社がギリアド社と
独占的実施権を取得する契約をすでに結んでおり、
日本での発売は、第一三共社になりそうです。
さすが、第一三共社、いいところに目をつけますね~。
現在、国内臨床試験はフェーズⅡを行っているところです。
では、画期的な作用機序の新たな治療ということは
なんとなくはご理解いただけたかもしれませんが、
CAR-T療法の実際の効果はどうなのでしょうか?
いくら画期的な治療法とは言え、
効果が期待できなかったら、ほとんど意味のない薬剤とも
なってしまう可能性すらあり得ます。
結論から言うと、
かなり効果は良いです。
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昨年、アメリカで発売された「キムリア」の臨床試験のデータ(ELIANA試験)
を見てみます。
適応は、「再発・治療抵抗性の前駆B細胞急性リンパ性白血病」です。
この「ELIANA」試験は、
アメリカ、カナダ、EU、オーストラリア、日本の25施設で
実施されたグローバルな試験です。
結果ですが、
「キムリア」投与後、3カ月後に82%という高い寛解率(奏効率)が得られ、
63例中52例(83%)に完全寛解(CR)または血球数の回復が不完全な完全寛解(CRi)
が得られています。
ただし、この完全寛解(CR)の意味は、
限りなく癌細胞が消失したが、完全に癌細胞が消失したわけではなく、
癌細胞が残っている可能性もあるという意味です。
投与3カ月後に、82%の寛解率(奏効率)という結果は、
オンコロジー業界では、かなりのインパクトのある(良い)数値です。
オンコロジー製品を扱っているMRさんなら、
どのくらいインパクトのある数字がお分かりいただけると思います。
キムリアのELINA試験という
グローバルな試験であり、
これは世界各国から患者さんが集められ、
アメリカ、カナダ、EUだけでなく、日本人の患者さんも6名含んでいいます。
ELIANA試験の試験概要を以下に簡単に記載します。
【ELIANA Trial】
試験デザイン:フェーズⅡ、single-arm、open-label
対象患者数 :75名(米国、カナダ、EU、オーストラリア、日本の全25施設)
主要評価項目:全寛解率 (CR/CRi)
副次評価項目:全生存率(OS)、無再発期間、微小残存病変(MRD)等
対象疾患 :再発・難治性のB細胞型急性リンパ性白血病
この試験の主要評価項目である、
全寛解率(ORR:Overall remission rate)は、
完全寛解:CR(Complete remission)あるいは
血液の回復不完全を伴う完全寛解:(Complete remission with incomplete blood count recovery:CRi)
です。
さて、CAR-T療法の効果をご紹介しましたが、
次は副作用を見てみましょう。
今回ご紹介する副作用は、
「キムリア」の臨床試験である「ELIANA」から抜粋しています。
一番多い副作用は、
サイトカイン放出症候群(発現頻度:77%)です。
この副作用は、抗体医薬品であり、
モノクローナル抗体の「リツキサン」や「ハーセプチン」等で発現頻度の高い、
副作用であり、抗体医薬品や免疫療法にて、頻度が高い副作用として
知られています。
血中に炎症性サイトカイン等が放出されるされ、
症状としては、悪心、頭痛、血圧低下等が起こります。
投与後、即時に起きることが多いため(反応するため)、
別名、急性輸注反応と呼ばれたりします。
投与時の反応は、
非アレルギー的に生じるため、
アナフィラキシーのようなIgEを介したI型アレルギー反応とは異なり、
投与薬剤が単球・マクロファージなどと結合することで、
サイトカイン(IL、TNF等)を放出することによって生じる過敏性反応の一種です。
サイトカイン放出症候群の予防法や対処法はある程度確立されており、
投与前の予防処置と投与後24時間以内の観察、休薬等で対応することが可能です。
予防で投与する(効果のある)薬剤もほとんど決まっています。
次に、発現頻度の多い副作用順に、
発熱(40%)、食欲不振(39%)、発熱性好中球減少症(36%)、頭痛(36%)が
代表的な「キムリア」の副作用です。
ということで、
それなりの頻度で副作用はありますが、
ものすごく高い頻度や、かなり重篤な副作用が必発するわけではなく、
抗がん剤や抗体医薬品でよくみられる副作用がCAR-T療法でも発現しています。
ということは、副作用マネジメントを徹底すれば、
副作用を最小限に抑えた高い治療効果が実感できるとも言えます。
CAR-T療法は世界的にも注目が扱っている治療法とお伝えしましたが、
来月(2018年6月)、
アメリカで行われるASCO(米国腫瘍学会)という世界的に有名な腫瘍の学会でも
CAR-T療法の発表をいくつあります。
特に注目すべき内容は、
同じCAR-T療法の、
ノバルティス社の「キムリア」 VS カイト社の「Yescarta」
です。
先日、2018年6月の米国腫瘍学会(ASCO)で発表される要約が開示されましたが、
その中でとても話題になっています。
ノバルティス社の「キムリア」と
カイト社の「Yescarta(KTE019)」の群間比較試験が中国(北京)で
実施されています。
中国からの、群間比較試験データですが、
キムリアの方が有効性、安全性ともに良いデータが出ており、
寛解率(奏効率)の比較では、
「キムリア」が100%だったのに対し、「Yescarta」は89%という結果が
出ているとのことです。
まだ、要約しか発表されてないため、詳細はわかりませんが、
今後のCAR-T療法の新薬に注目です。
日本のCAR-T市場を見てますと、
すでに先月の4月23日に、
ノバルティス社が「キムリア」の承認申請を厚生労働省していますので、
日本においても、アメリカと同じく「キムリア」がCAR-T療法の中で
一番最初の発売にとなりそうです。
次は、第一三共社がギリアド社(カイト社)から、開発、製造、販売権を取得している
「Yescarta」(KTE-C19)が2番手になりそうです。
三番手は、日本発のバイオベンチャー企業である「タカラバイオ」社が、
CAR-T療法のフェーズⅠ/Ⅱ準備中です。
「タカラバイオ」社はバイオベンチャー企業の中でかなり有望視されている企業です。
遺伝子治療を得意とするバイオベンチャーです。
今後、タカラバイオ社は、どこかの製薬企業と共同開発、販売等の締結を結びそうですね。
世界各国のCAR-T療法のパイプラインのあるバイオベンチャーは、
軒並み買収もしくは
企業提携を結んでいます。それだけ重宝されている領域でもあります。
以上、
長くなりましたが、
私がお伝えしたかったことは、以下の3点です。
① 次世代オンコロジー治療としてのCAR-T療法という選択肢
② CAR-T療法の魅力と画期性
③ CAR-T療法の現状と今後
です。
かなり久しぶりの記事更新となってしまいましたが、
今後は定期的に記事更新したいと考えておりますので、
何かテーマについて要望等ありましたら、
いつでもご連絡ください。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
(※ELIAN:N Engl J Med. 2018 Feb 1;378(5):439-448. doi: 10.1056/NEJMoa1709866.より抜粋)
ますます注目されるCAR-T療法、今後に期待です!
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